2004/9/29
   
ハープのある部屋
   


写真は、我が部屋に鎮座ましますアイリッシュ・ハープ……部屋の主のような存在。いくつか手がけた楽器のうち、ハープだけは私が最初から専門家に師事したただひとつの楽器。我がマイスターは、現在もご活躍中の木村直子氏。ところが、最近は〈業務〉が多忙、を理由に遠ざかっている。それでも、クモの巣にからめとられないようにと、ときどき思い出したように弾いている。
 
演奏会の舞台で見かけるグランド・ハープがペダルの操作で半音を出すのとはちがい、アイリッシュ・ハープは半音の上げ下げを手動でフックを操作するのが特徴。したがって、グランド・ハープのように万能ではなく、各調ごとにフックをあらかじめ設定しておく必要があり、演奏中の転調にはおのずと限界がある。つまり、きわめて原始的な楽器なのである。そこが魅力であるともいえる。事実、アイリッシュ・ハープのファンは多いのだ(楽器がグランドより安価ということも関係あり!)。なお、スタイルが少しずつ違うけれど、ゴシック・ハープやチロリアン・ハープも基本的には同じ。
 
ハープという楽器はいささか特殊であまり一般的ではないかもしれない(交響曲で必ず出番があるわけでもなし)。それでも、最近は吉野直子上松美香など多士済々でにぎわっているのは頼もしい限り。ハープの世界の門戸は広く開いているのだ。しかし、リリー・ラスキーヌはこの世界では神様のような存在。
 
ハープの名曲は数々あるものの、代表作をひとつだけ。ご存じ、モーツァルトの《フルートとハープのための協奏曲》。超有名な曲――ロココの精髄がシャンデリアのようにきらきら輝いている音楽である。フルート・パートを吹いたことはあるものの、ハープはまだ。一度は挑戦してみたい。近代音楽では、独奏曲ではないけれど、マーラーワーグナーの使用例が印象的。ここでは、ワーグナーの楽劇で使用される例を挙げてみたい。《タンホイザー》では歌合戦の伴奏楽器として使われているし(ここで登場するのがゴシック・ハープ)、また《パルジファル》ではそれまでになかった斬新な使い方がされている。



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