ドイツ語辞書と
参考書案内

Uebung macht den Meister.
 辞書選びは友だち選びのようなもの。外見はどこか気取り屋で、気難しそうでも君たちのほうから積極的にアプローチすれば親友になってくれるはず。ブルドッグやグレートデンだって慣れれば、人間の良きパートナーになれるのと同じ。要は相性がいいということ。ここに古典的なものから最新鋭まで、数ある中から選りすぐりをとりあげてナビゲートする。いずれもそれぞれに特長も魅力もあって、難のつけようもない。最近発売されたものは、装いもなかなかオシャレである。内容はもとより、サイズや装丁、できれば手触りのよさまで吟味して選べば言うことなし。君たちの良き友との出会いを期待する。
 
独和辞典                                
パスポート独和・和独小辞典』(白水社)
収録されている語数が少なく、これではまるで単語帳、学習用辞書としては薦めにくい、と初見では思ってしまう。ところが、けっこう使い勝手がいいのだ。活字が大きめでレイアウトも見やすく、持ち運びにベンリーで、手によくなじむ不思議な雰囲気と存在感をもっている。その品格はなかなかのもの。以下に述べる辞書たちに語数では負けても、その他の点では太刀打ちできる、コンセプトのある辞書といえる。こんなにコンパクトながら、な、な、なんと、ドイツで使われているポケット・ティッシュの商標Tempoまで載っている!逆に、初学者にはHabilitation(大学教授資格取得試験)は不要ではないかとも思う。付録の《ジャンル別語彙集》は図解入りで、限られたスペースの割には各分野のタームをきめ細かく集めている(付録ではなく、本体かも)。〈独和+和独+ジャンル別語彙集〉で三位一体のこの辞書は、内容もさることながら、ただ持っているだけで満足できる、魅力に満ちたプチ辞書。本格的に使いこなすには不十分であるけれど、教室へはもちろん、どこにでも楽々持っていける可愛い本書で、ドイツ語が楽しく、気持ちよく勉強できればメデタシ!
 
初級者に優しい独和辞典』(朝日出版社)
 書名にあるとおり、あくまでも初心者用であるため、語数は限定されるが、一年次の初級教科書なら問題なく対応できるだろう。随所に挿入されている囲み記事がふるっている。ドイツでは週の初めは日曜日か月曜日なのか?「失礼」、「ごめんなさい」にあたるEntschuldigen Sie!Verzeihen Sie!とはどう同じで、どう違う?といった問いに明快に答えてくれるし、「行く」「来る」をドイツ語ではどう表せばいいのか等、実にきめ細かく説明されているし、その語り口がまるでこちらに語りかけてくるように軽妙なのだ。冒頭の「この辞書の使い方」ってページ、普通はとばしてしまうところだけど、「文字と発音」以下の説明をじっくり読んでほしい。目からウロコの名解説。読む辞書としてもお薦め。「初級者に優しい」にいつわりはなく、ブルドッグにあらず、パピヨンかプードルのようだ。人なつっこいダックスフントかも。
 
新キャンパス独和辞典』(郁文堂)
 コンパクトな入門用辞書としては用例が類書よりも豊富で充実した独和と一目置いていた旧『キャンパス独和』が姿を消して久しく、その存在を忘れかけていたら、今春、装いも新たに再デビューした。用例の豊富さがそのまま踏襲されているのは、まさに「昔の名前で出ています」だけれど、数多くの基本的な重要語が、それぞれ語義説明をワクで囲まれ、たいへん見やすくなっている。見違えるほどのリニューアルである。jaとかnein、あるいはdochなど多義的で奥が深い語義の説明がキレイに整理され見やすくレイアウトされているのは、初学者にとっては大きなメリットになるにちがいない。学習用ドイツ語辞典の一大進化といえる。カコミになっている語彙はとりわけ丁寧に根気よく読むように……と、気合いの入った学生諸君に進言できるというわけだ。daherdamitみたいなda-で始まる、初心者にとっていかにも煩わしそうな合成語が額縁に入れられてDの部のはじめあたりにひしめいているのは圧巻である。用法が多岐にわたる代名詞のesも、実に要領よくまとめられている。序でに、旧版にもあった〈穴埋めのes〉の説明には、編者のこだわりがうかがえる。付録の『文法キーポイント』は、文法ハンドブックのように活用できよう。
 
エクセル独和辞典』(郁文堂)
コンパクトなボディながら用例が豊富なのが最大の特徴。用例が多いということは、独作文をするときにも大助かりということ。要所要所に類語や文法説明のカコミが設けられていているのも親切。付録の《人称変化表、格変化表》、《文法キーポイント》も予習・復習にぜひとも活用したい。辞書こそは、単語の意味を調べるだけではなく、教科書を総合的に理解するためにも最良の相談相手になってくれるということを、本書で実感してほしいものだ。
 
新アルファ独和辞典』(三修社)
重要語は特に大きな赤色の活字で印刷してあり、見やすく眼にやさしいレイアウトは他にならぶものがない。イラストや写真を配置してあるのも楽しい。特定の重要単語にかぎって見出しのあとに付けられた《人称変化(動詞)》や《格変化(名詞等)》の表を活用すれば、「イッヒ・ビン、ドゥ・ビスト……」もばっちり。その分だけ語数の少ないのはやむをえないけれど、例文や用例はいずれも教室での授業にそのまんま役立つようなものばかりで、初級テキストの学習には〈即戦力〉となるだろう。
 
プログレッシブ独和辞典 第2版』(小学館)
コンパクトながら実に良くできた学習独和で、感心させられる。簡潔で要を得た語義説明ばかりではない。Abend(夕方)を引けば、ユダヤ・キリスト教の世界観では一日が夕方始まるとされていたので、Abendにはかつて〈前日〉の意味があったこと、古代ローマでは一年が3月に始まったことがJanuar(英January)の項でわかる。言葉の背景にある歴史的事実にも目配りされている。派生語や合成語もイッパツで検索可能。いい気分である。《言い換え欄》、《複合語欄》、《類語欄》、《関連語欄》、《語源欄》が随所に設けられていて付加価値を高めている。《類語使い分け表》や《機能動詞欄》といった新工夫も盛りこまれている。海は海でも、太平洋や北海、地中海の〈海〉はそれぞれドイツ語でなんと言えばいいのか、《類語使い分け表》が教えてくれる、といった具合。弟分にあたる『ポケット・プログレッシブ独和・和独』(3000円)もおすすめ。活字が小さいのはガマンするとして、使い勝手はよく重宝する。 小学館の独和は、ポケット版から後述の『独和大辞典』まで3種類のサイズのヴァージョンがラインナップされていることになる。〈スリーナンバー車から軽自動車まで〉揃っているのは、独和辞書界ではここだけ!
 
アクセス独和辞典 第3版』(三修社)
『アクセス独和』は今春デビューした第3版にいたってきわだった進化形を見せる。「類書をしのぐ充実の見出し語数」をうたっているとおり、たいていの単語はこれで調べられる。しかも、大規模な語彙データベース(コーパス)に基づいているので、ほんとうに知りたい単語や用例にアクセスできる。実用性重視の独和なのだ。ドイツで冬の時期の天気予報で毎日のように耳にする〈にわか雪〉のSchneeschauerも独立した見出しとして出ているし(Schauer自体にその意味もあるけれど)、ザルツブルク名物のスフレSalzburger Nockerlだって載っている。anを引けば、前置詞の説明が2頁にわたって解説されるし、habenの項では完了形の説明が挿入されている。辞書と文法教科書とのドッキングみたいなスタイルは、類書には見られないユニークネスで、こんな辞書見たことない!《発信型ドイツ語会話》や《和独》等付録も充実している。いいことずくめではあるけれど、いかんせん、語数が増えて、旧版よりも分厚くなってしまった。メタボ気味の本書を教室に持ちこむのは厳しいだろう。自宅で本書を使ってじゅうぶんに予習したうえで授業には教科書やノートだけで臨む。肉体的に楽をしたければ、これっきゃない。もっとも、デジタル版が電子辞書に搭載されればこの問題は解消される。
 
アポロン独和辞典 第3版』(同学社)
学習用独和として定評のあった前身の『新修ドイツ語辞典』をベースにした息の長い歴史をほこる辞書。これまでこまめに改訂が行われ、最新語も積極的に取り入れてきている。注意すべき重要動詞の人称変化が一覧表になってわかりやすく、基本語には代表的な用例を赤枠のカコミであげているといったふうに初心者向けの配慮がよく表れている。随所に《ドイツ・ミニ情報》といったコラム欄が張り巡らされていて、〈読む辞書〉の性格も十分。ドイツでは16歳からの飲酒が認められていることも、ドイツの喫煙・禁煙事情も手に取るようにわかる。コラムを拾い読みしただけで、キミはもういっちょまえのドイツ通といえるだろう。《福祉用語》、《コンピュータ用語》、《環境用語》、《医療用語》等分野別にわけて専門用語をまとめているのも本書のみ。《簡単なドイツ語会話》、《和独の部》、《手紙の書き方》は、それぞれ初級の会話や独作文なら不足はしない。
 
クラウン独和辞典 第4版』(三省堂)
三省堂の総力を結集して実現した学習用独和。一見初心者用のやさしい顔立ちであるが、なかなか奥行が深い。収録語彙も語義説明も過不足なく、しかも用例はたっぷりで、総じて優等生といった印象を受ける。クラウン英和や仏和と同じ血統を誇るのだ。注目すべきは、ぬかりのない文法説明で、これこそこの辞書の真骨頂であろう。〈Von Mensch zu Mensch〉(うち解けて)のMenschが無格である点に触れて、〈聯語(れんご)〉として詳しく説明しているのも評価できる(研究社『独和中辞典』、同学社『新アポロン』も触れている)。形容詞のvielも英語のmanymuchに対応させて説明しているのは分かりいい。中級の読物を予習していると、よくrichtunggebend とかrichtungweisendといった合成された形容詞・副詞が出てきて、慣れないと雲をつかむように理解しづらいだろう。ドンマイ!両方ともぬかりなく調べられる。巻末付録の《文法小辞典》は価値ある優れもの。アルプスの少女ハイジ(Heidi)は見出しで引けば、Adelheidの愛称形であることがわかる。欲を出して《小辞典》の〈愛称形〉の項を読めば、-heidHeidiになる仕組みがわかるはず。上の〈聯語〉の場合も同様で、本文の文法説明をこの《小辞典》は連動して補っているのだ。予習にも復習にも鬼に金棒である。
 
フロイデ独和辞典』(白水社)
このクラスでは、いっとう新しい独和辞書。話法の助動詞sollenをひっぱってみると、用例が充実しているし、おまけに命令文を間接話法に書き換えるときの要領や、muessenとの相違などじつにきめ細かな説明までついていて完璧。Bildschirmschoner(スクリーンセーバー)やbrowsen(ホームページを見る)といった最新語も多数収められている。随所に文化的な記述も盛り込まれていて、百科事典的にも使えるのは便利。付録も充実している。なかでも《聖人暦》や《ドイツ歌曲選》などは独和辞典で初めての試み。語数も7万5千語と多く、立派に中級辞書の貫禄である。全体として辞書の作りに白水社のお洒落な感覚がよく表れていて、いつまでも〈歓び〉をもって使えるだろう(フロイデ=Freudeとは〈歓び〉の意)。
 
新コンサイス独和辞典』(三省堂)
昔からの伝統をほこる旧『コンサイス独和』が全面改定されて装いも新たに登場したニューフェース。内容的には旧版を踏襲しているので、申し分なし。それでいて、こんなにコンパクトになってしまっているのは驚異的。片手にらくらくと納まってしまう。この片手に納まるッッというのはとても大事なことで、またアリガタイことである。いくら立派な辞書でも手が疲れるようだと能率がよくない。結局、学習用辞書との相性は、内容もさることながら、〈手との相性〉ということにつきるのだ。外国タバコのような表紙のデザインが意外とシャレていて、スマートに辞書を引きこなしたいキミにはイチオシ。
 
マイスター独和辞典』(大修館)
ワインやビールの種類までわかるといった百科全書的な性格を兼ね備えた総合タイプの独和。ベースになる語義部分の構成や図解の方法も極上の仕上がり。あちらこちらでイラストや図表が立体的に張りめぐらされていて便利。たとえば、《複合語》の説明はまことにユニークである。つまり、Fahrtに前綴りabをつけてAbfahrt=〈出発〉、ausをつけてAusfahrt=〈発車〉といったように造語関係が一目瞭然。語彙も驚くほど豊富で、中・上級まで使える。文字どおりマイスター・クラスの貫禄あり。ただし、この辞書を使用する場合、性の区別が前についた定冠詞の形で示されている点と、他動詞・自動詞の区別が明示されてない点は類書とは違うので注意を要す。「+4格」が他動詞のしるし、それ以外は自動詞と思えばよい。なお、本書を手のひらサイズに縮小した『ハンディマイスター独和辞典』(3600円)も用意されている。文字どおりハンディで、携帯にはすこぶる便利。驚くべきことに、ひとまわりもふたまわりもチッチャなサイズながら新語を15000語もプラスしているので、この子は親を越えている。出藍の誉れとはこのこと。ただし、字が小さいので、視力に自信があることと、例外的な場合をのぞいて、発音記号が省略されているので、発音規則をマスターしておく必要があることの二点がクリアできれば、こんなに重宝するものはない。ドイツ、オーストリア、スイスへの旅行には最適。アイヴォリー・ホワイトの表紙がまぶしい!『ハンディ』は残念なことに、ただいま絶版中で入手不可のようだ。
 
新現代独和辞典』(三修社)
古典作品から現代文学や新聞・雑誌まで広い範囲をカバーできる実力派の辞書。付録の《修辞法》、《韻律法》は類書に例がない独自のもの。《分綴法》、《句読法》とともに、とりわけ人文系のテキストの深い読みのために活用できる。新語が多く取り入れられているのが、ひと味ちがうところ。上記の『マイスター独和』と同様に Bolzplatzといった最近の俗語を載せているのも新しさへの対応といえよう。もっとも、「むちゃくちゃな試合のサッカー競技場」という訳語はもう一工夫ほしいところ。一方、jn zum Ritter schlagen(刀礼を施して騎士にする)なんて古めかしい言い方も載っていて、騎士物語を読んだりするときに大助かり。ともあれ、内容もさることながら、手に持ったときの感触もなかなかヨロシイ。それに、活字の見やすさは抜群。◆印の《用例》や?印の《関連語》といったレイアウトのうまさは見やすく目の健康によい。CD-ROM「Bertelsmann新正書法辞典」(WINDOWS版)付も出ている。
 
独和辞典・第2版』(郁文堂)
旧版を全面改訂してリリースされた〈決定版〉独和。旧版の利点をすべて踏襲したうえで、印刷の調子も改善されたので、ずいぶんと見やすくなっている。豊富な例文とともに、文法説明も充実していている。見た目には地味で目立たないけれど、随所にしかけられた、さまざまの改良・工夫は専門家からも高く評価されている。〈通〉向きの独和なのだ。ドイツ語独特のニュアンスをもつGemuetWesenも、まず〈心〉や〈本質〉といった具合に基本となる訳語をひとつだけにしぼって、委細は用例によって理解させるやり方は実に明快である。gehen(英語のgo)のように長々と語義説明のつづくものも、ゴチックの数字で区分されたとおりに見ていけば、意外と楽にサーチできる。控えめな外観ながら中身の濃いこと!能あるタカは爪を隠すのである。それにしても、この辞書は目が疲れる。もうすこーし見やすいレイアウトにならないものか?
 
◆その他の辞書たち……ドイツ語辞書の鉄人になろう!
中級から上級に進むキミには、とっておきの独和を薦めたい。
 
独和中辞典』(研究社)
語数2万語の本格的な和独がついた中辞典。独和と和独のドッキングは、独英と英独が合体しているといったふうに欧米の学習用外国語辞書ではあたりまえのスタイルである。本書は独和も和独も、用例が多いのが一大特徴。和独の部も活用すれば、読解に役立つばかりか、作文するときにも重宝する。たとえば、「おもう」を引いてみると、glauben, meinen, denkenの違いがじつに分かりやすく例文で説明され、さらに推測をするときに使うannehmen, vermutenと続く。和独の部が、独和の機能も果たしている。動詞tunも、和独の部の「する」を参照するようにとの指示があり、machenとの違いがわかるようになっている。つまり、独和が和独を、和独が独和を、それぞれ補っているのだ。これぞまさに〈ドイツ語活用辞典〉と言ってよい。こうした独和と和独との連携あるいは一体化は、インターネットで使用されるハイパー・テキストのリンケージの技法を使えば、ずっと効率よく具体化できるだろう。デジタル化できればすばらしいものになるはずだ!この辞書は、そうしたアイディアの提起という点では独自のもので、賞賛にあたいする。
 
独和大辞典 第2版』(小学館)
最大の語彙数をほこる独和辞典界の横綱である。die moebiussche Flaeche (メビウスの帯)、Angelologie(天使論)もこの辞書でようやく調べがつく。Wettkampfgymnastik(新体操)が他の独和には出ていなくって、本書のみ収録しているのは意外や意外!Jetzt wird geschlafen!(さあもうねんね)といった例文もあり、表現辞典としての価値も高い。Guten Tag! も「(日中のあいさつとして)こんにちは、いらっしゃいませ、お帰りなさい;ただいま、行ってまいります、行ってらっしゃい;(拒絶の返事として)とんでもない; 冗談じゃない;まっぴら[ごめん]だ」との説明があり、見事というほかはない。ただただ脱帽するのみ!オオキイことはイイことなのである。要所にイラストもついているし、また説明があまりに長く、詳細になる基本語は見出しの次のカコミに要点が整理してあるなど、分厚い割に使い勝手はよい。なお、内容はそのままで版型を縮小しただけの『独和大辞典[コンパクト版]』(7500円)も用意されている。活字が見にくくなったのは我慢するとして、なによりも値段の安いのがありがたい。専門文献の解読のみならず、ドイツ語のクロスワード・パズルをやる時にも必携の一冊である。現在出ている独和辞書では最も大部な本書が、実は、簡略版ではあるけれど、カシオの電子辞書XD-GF7150に搭載されている。かさばって持ち運びに不便とはもう言わせない!
 
和独辞典は意外と使い方がむずかしく、最初はなくともかまわないが、ぜひとも一冊欲しいとなれば、以下の2点から選べばよい。
 
和独辞典』(郁文堂)
見出し語にひらがな表記方式(五十音順)を採用した元祖。ローマ字表記よりも馴染みやすいだろう。サイズも手頃で使い勝手はよい。語数はこれくらいでいいのだ。〈やっぱり=やはり〉をドイツ語でどう言うか、例文でしっかり教えてくれる。付録の《手紙の書き方》や《会話慣用表現》もコンパクトながら実用的価値は高い。《文型一覧》はユニークで、ドイツ語の文章感覚を養うのに活用できるはず。なお、本体部分で〈楽譜〉や〈手〉、〈天気図〉のように関連する語彙を図解して一括表示しているのはドイツの『ドゥーデン図解辞典』のやりかたで、このアイディアはもっと多用してもよい。
 
新コンサイス和独辞典』(三省堂)
旧版を全面改定したリニューアル版でコンサイスの和独辞典もイメージ一新。見出し語が、郁文堂の『和独』にならって五十音順のひらがな表記に改められたのが大きな変更点。新語や専門語も多く取り入れられているので充実度アップである。〈花粉症〉や〈納豆〉、〈雛祭り〉も載っているし、〈ぼちぼち〉や〈ちやほや〉、比喩的用法としての〈天狗=てんぐ〉も詳しい。『新コンサイス独和辞典』と肩を並べればまぶしいツーショット、しかし、『クラウン独和』とも結構なコンビとなるだろう。
教室の授業で、英語とドイツ語がいろいろの面で親戚みたいに近い関係にある、といった話を聞くことがあるだろう。両方とも印欧語族ゲルマン語に属する。そんな意味からも、英語に強いキミにも、英語に弱いキミにもぜひとも独英辞典を使ってみてほしいものだ。
以下は、独・英、英・独、独・独など。
 
The Pocket Oxford German Dictionary》(0xford Univ. Press)
独英・英独が一巻にセットされている。両部とも用例を極力省略し、しかも訳語が厳選されているので、初心者にはかえって使い勝手が良い。詳しい用法は独和で調べればいいのだから。このポケット版で物足りなくなったら、同じオックスフォードの系列でConcise版やStandard版へとグレード・アップできる。
Langenscheidt社の独英・英独シリーズも手ごろである。ポケット・サイズのものからデスク・サイド版まで種々のエディションがある。購入にあたっては洋書店で実地調査するとよい。黄色の地にブルーのL字が浮かんだ表紙が目印。
Cassell's German-English / English German Dictionary》(Macmillan, New York)
ショコラ色の表紙で、サム・インデックスの付いた造本がシブイ。米国マ社で出版されているにもかかわらず、Zentrumはcentreのみ、Arbeitもlabourのみ、Aufzugはliftが先に出てくる、といった具合で、中味は頑固なまでに英国風。熟語・合成語の表示が見やすく、活字やレイアウトも鮮明で実に使い勝手がいい。
 
0xford-Duden Bildwoerterbuch - Deutsch und Englisch》(Dudenverlag)
すべてイラストで事物を確認できる図解辞典。ただし、収録されているのは名詞だけ。
 
ドイツ語にとりつかれてしまったキミには、独独辞典の使用をすすめたい。英英辞典を使いこなしているキミなら、独独の効用については言うまでもないことだろう。 ビギナー向けのものが諸種でているけれど、手軽に扱えるものとして、
Langenscheidts Grosswoerterbuch Deutsch als Fremdsprache》(Langenscheidt)をあげておく。〈Deutsch als Fremdsprache〉――つまり、ドイツ語を外国語として学ぶという視点から編集されているので、親しみやすい独々辞典となっている。
上級者には
Wahrig Grosswoerterbuch Deutsch als Fremdsprache》(Bertelsmann)7万語の語数を誇る。ペーパーバック版なら、それほどかさばらず、心強い机上の友となるだろう。最新語も詳しく重宝するが、ブルーの地になっている解説部分は、初心者にも役立つはずである。duerfen, erlauben, muessenの違いといった語法的な説明も、ドイツのサッカー事情についてのコメントも独和辞典の解説とはひと味違う。
ドイツ語の百科辞典入門も兼ねて、
Der Brockhaus in einem Band. Neu von A bis Z》(Brockhaus) あたりに親しんでほしい。
 
オンライン辞書 
Wikipedia》:
 ネットの時代には常識の〈電子版・百科辞書〉――全体で何ページあるのか推し量れず、地球規模の得体の知れないレキシコンである。いずれにしても、それらをドイツ語辞書として使わない手はない。ただし、ドイツ語ウィキペディアのサイトを活用するためには、当然のことながらある程度の〈ドイツ語力〉が必要で、中級者、上級者のテクとな・ら・む。新聞・雑誌のいわゆる時事ドイツ語を読む場合は、独和辞典では対処できない場合が多々ある。そんなときに、道筋をつけてくれるのだ。ネット上の辞書はまさに時事ドイツ語でもあり、だから、〈時事ドイツ語は時事ドイツ語で理解できる〉というけ。
 Wikipediaは、癖のないドイツ語で綴られているので、読みやすい。ネット上の情報は玉石混淆で、似非情報には要注意とよく言われるが、ウィキの場合はチェックの目が光っているということで、まずまず信用できるのではないか? 不適切な記述は、利用者の指摘によって常時訂正されていくという建前になっている。いっぽう、Googleの画像検索なら初級学習者でも利用価値はある。当然のことながら、具体的な姿・形のあるものを表す〈名詞〉に限られるのだが、それがどのようなものかこの目で確かめることができる。野鳥など、YouTubeにリンクして鳴き声まで聞けるのだ!Duden社にはまことに申し訳ないが、同社のBildwoerterbuch(図解辞典)の出番がなくなってしまっている――もっとも、ネットでは、図像からそれに対応するドイツ語を知ることはかなわないけれど……。
 
参考書 ドイツ語の参考書は、初心者向けから上級車向けまで数多く出版されている。すべてを取り上げるのは難事で、目についたものをあげるにとどめる。
 
関口一郎『マイスタードイツ語コース』(1文法、2表現、3語法、大修館)
セキグチ先生のマイスター三部作。まるで教室で授業を受けてるみたいな話をしっかり聞いているうちに、自然にドイツ語が分かるようになる。再履修のキミにもウ・ッ・テ・ツ・ケ!第3巻の『語法』は中級・上級向け。
 
小坂光一『マニュアルドイツ語ABC』(郁文堂)
〈マニュアル〉と銘打っているけれど、パソコンやワープロの〈取り扱い説明書〉よりはよほど親切で分かりやすい。説明がビジュアルになっているので、試験直前の復習と整理にも重宝するはず。
 
早川東三『NHKドイツ語入門・第2版』(日本放送出版協会)
ドイツ人の生活に即した平易で基本的な文を読みながら、ドイツ語を楽しく、総合的に学べる。
 
浜川祥枝『ドイツ文法の初歩』(白水社)
接続法の説明も懇切ていねい。親しみやすい充実した文法書。索引も完備。
 
三瓶慎一『CDで学ぶドイツ語入門』(白水社)
CD付きのユニークなドイツ語入門書。何がユニークといっても、「駅のアナウンスやCM、ニュースやオペラ公演の案内など、臨場感あふれる音の数々を収録。こんなCD、聴いたことない」がユニーク。完了形を作るときにどうして助動詞のhabenとseinの区別があるのか、どうして英語にはないのか、といった、類書には見られない文法や語法の説明がさりげなく書かれているのもまたユニーク。ユニークてんこもりで、中級や上級を自負する向きにも役立つ。どんなことでも常に初心に立ち戻ることは大切なこと!
 
中島悠爾・平尾浩三他『必携ドイツ文法総まとめ』(白水社)
初心者も中級の学習者も、文法事項であやふやさを感じたとき、手際よくアドバイスしてくれる強い味方。名詞の格の用法もしっかりまとめられているし、奥が深い接続法の用法も、これで全体の見取り図が理解できる。コンパクトながら、中身は充実しているのだ。バッグに入れても邪魔にならないサイズで、持ち運びも楽な〈ドイツ文法ハンドブック〉としておすすめ!
 
ミッヒェル他『これからのドイツ語』(郁文堂)
斬新な視点から書かれていて、内容も面白く、ついつい読んでしまう。
 
濱川祥枝『現代ドイツ語』(白水社)
文例が豊富。索引完備。
 
在間 進『ドイツ語文法』大修館)
代名詞が半ば過ぎてから出てきたりで、教科書の進度には合わないけれど、文法現象をこうした視点から見なおしてみるのも勉強になる。
 
関口存男『接続法の詳細』(三修社)
ツウ向け。接続法の勉強のみならず、ドイツ語のさまざまな現象を解明するための展望を与えてくれる古典的名著。本書を通読できれば、ドイツ語の文法は免許皆伝!
 
英・独を比較しながら学ぶというのは、両者の歴史的な関係を考えただけでも有効な勉強の方法であろう。3冊を挙げる。
 
福田幸夫『英語活用・ドイツ語入門』(白水社)
 
佐々木傭一『新英語から入るドイツ語』(郁文堂)
単に英語との比較だけではなく、nichtとkeinの使いわけや、形容詞の格支配の説明等 、随所にユニークネスが見られる。
 
Eggeling《Dictionary of Modern German Prose Usage》(Oxford at the Clarendon Press)
例文の多くがドイツ文学作品から引かれていて、格調高い。文法の基礎ができていればどんどん読んでいけるだろう。不定代名詞として使われるwelchの説明など、おおかたの独和辞書のそれとはひと味違う。スルメのように噛めば噛むほど味が出てくる、価値ある一冊。
解釈力を養成するためのものとして、
 
小栗 浩『独文解釈の演習』(郁文堂)
(現在は改訂版として、青木一郎『わかりやすいドイツ語の構文と解釈』が刊行されている)
 
信岡資生他『中級ドイツ語の研究』(朝日出版)
 
有田 潤『文法復習・やさしい独文解釈』(三修社)
 
横山 靖『独文解釈の秘訣 I, II』(郁文堂)
大学院入試等の〈傾向と対策〉として定評がある。
 
特殊なものとして、
森 五郎他『医科のドイツ語』(郁文堂)
 
青木他『理工科のドイツ語』(郁文堂)
上の2冊とも対訳式。取り上げられている文章が古めかしいものばかりで、DNAやニュートリノの話題こそ出てこないけれど、自然科学の論文を読むための基礎訓練に役立つだろう。
 
上田浩二『ふれあいのドイツ語』(白水社)
独作文というと気が重いかもしれないが、本書ではそうした心配は無用。かつてNHKテレビ講座で好評を博したウエダ先生から楽しいお話を聞きながら、コミュニケーションの時代にふさわしい、生きたドイツ語表現の基礎力がつく。
 
岩崎英二郎『会話風やさしい独作文』(第三書房)
独作文のコツを、まるで手品の種明かしをするように教えてくれる好著。
 
伊藤/クルマス『ドイツ語表現辞典』(朝日出版)
 
関口一郎『ドイツ語表現ハンドブック』(白水社)
 
イシュトヴァーン『ドイツ基本語活用辞典』(第三書房)
・・・上記の辞典とハンドブックの3冊は、独和辞典のところで取りあげるべきかもしれない。辞典のスタイルではあるけれど、独作文の練習書として使う手もあるだろう。
 
宮内敬太郎『ドイツ語の手紙』(白水社)
 
岡島孝一『楽しいドイツ文手紙の書き方』(郁文堂)
 
村田・インゲボルク『改訂・標準ドイツ会話』(白水社)
 
石川・サスキア『ドイツ会話40章』(白水社)
 
W. ミヒェル/新保『ドイツ トラベル会話』(郁文堂)
出色のドイツ語会話ハンドブック。トラベルのみならず、ドイツ生活の様々な場面についての解説が詳しく、気の向くままにひもとくだけでも楽しい!付録にCDが付いているのも、会話の書としては当然のこと。
 
在間進『携帯版ドイツ語とっさのひとこと辞典』(株式会社DHC)
 
在間進/亀ヶ谷昌秀『独検合格 単語+熟語1800』(第三書房)
独検にも果敢に挑戦していただきたい。
 
 
番外編――私とドイツ語辞書
 
●『岩波独和辞典』(岩波書店):
 独文科の学生時代から使用していて、現在手元にあるのは2冊目。ぼろぼろになって、型くずれした初代はチューリヒの宿で処分してきた。長らく改訂されないまま今日にいたり、既に絶版となって、新本の入手は無理。仮に古書店で手に入ったとしても、最新の語彙や新正書法にも対応していないので学習用として学生諸君には勧められない。それでも、あえて言いたい。この辞書、コンパクトで語数も多く、実に使いやすい。表紙がクロスで手触りもよく、好感が持てる。特筆すべきは、語源にメチャ詳しいということだろう。ドイツ語とは直接関係のないNapoleonShakespeareの語源まで載っているのには、呆れてしまう!語義説明も、基本的なものはゴチになっていて、細かな活字の割には見やすい。Eingebungの「(授かったようにして心に浮かぶ)思いつき」といった説明の仕方には、編者のポエジーのようなものさえ感じられる。
 
●『木村・相良=独和辞典』(博友社):
 往年の標準的な独和……この『キムラ・サガラ』か、『コンサイス』か『岩波』くらいしかドイツ語辞書が無かった昔々の話。今日では数多くの類書に押されて、本屋の店頭でも見かけなくなっている。今となっては骨董品のごとし。実力も認められず、窓際族なのだ。ところが、ドイツ語の教室でこれを持ってきている学生が一人くらいは見かけることがある(ときにはクラスで二人もいたことも!)。両親から譲り受けたに違いないが、二重の意味で感動させられる。つまり彼または彼女の両親が社会人となっても、処分することなく大切に保存していたということ、そして彼または彼女がそれを唯々諾々と譲り受けたということ、である。そもそも、DNAのなせるわざか、彼または彼女が親にならって(?)第二外国語でドイツ語を選択したこと自体が感涙ものなのだ……。教師としてはただただ頭が下がる思い。襟を正さねば、と濃紺の表紙の『キムラ・サガラ』を見かける度に身が引き締まる。
 
●『Ex-wordドイツ語版』(CASIO社の電子辞書):
 独和の入っている電子辞書は選択肢が少ない。そんななかで、小学館の『大独和』搭載のこのカシオは貴重。ただし、そのままフル・ヴァージョンで格納されているわけではなく、印刷本のオリジナルとの違いは残念ながら認めざるをえない。デスクでは印刷本、外出のときは電子版というふうに棲み分ける手もあるだろう。この辞書、他に『クラウン独和』、『新コンサイス和独』、『ジーニアス英和・和英』、『広辞苑』等が入っている。オプションで追加もできる(そのためにはPCが必要)。私は、仏和・和仏、伊和・和伊をインストールして使っている。ただ、モノクロの液晶画面は義理にも見やすいとはいえない。教室によっては、新入生の8、9割が電子辞書を使っている今日、画面が見やすくなり、語句でも検索できるようになればとも思うが、そうなるとスマホ、書籍端末、タブレットで辞書が読めれば……、となりこの話は際限が無くなる。序でに、CASIOがドイツで販売している電子辞書『CASIO』は、逆輸入されたものを国内で買える。PONSの独英・英独、OxfordのAdvanced Learner's Dictionary、Duden Deutsches Universalwoerterbuchが入っている。意外と役に立つのが、語義説明が少なく、同義語辞典的に使えるPONSの独々。
 
以下はドイツ由来の独々辞典たち:
●『パウル』(Hermann Paul/ Werner Betz Deutsches Woerterbuch):
 語数は多くはなく、基本的な語彙に絞って、語義をていねいに説明してくれる解説型辞典。活字が混み合っていなくて、普通の書物を読む感じは、まさに読む辞書。〈小娘〉を意味するBackfischの由来など、一読明瞭なのだ。『パウル』には揺り椅子がよく似合う。ドイツでCD-ROM版も出ていて、コンピュータでも使用できる。けれども、白い紙の上に並んでいる活字を追うのもまた悪くないものだ。
 
●『ドゥーデン』(Duden Das grosse Woerterbuch der deutschen Sprache)
 現役時代は、研究室に旧6巻の印刷本を備え、自宅ではもっぱら最新10巻本対応のCD-ROM版を手軽に使用していた。10巻もの大部な辞書をCDディスク一枚で使用できるのは至福の一語に尽きる。この辞書は、20万語以上の見出し語を擁する浩瀚なドイツ語辞書。文学作品等からの引用がウリで、語義を知るばかりか、読む愉しみもあるのだ。たとえば、〈morgenstill〉といった何気ない形容詞も、スイスの詩人C.F.マイヤーの『Amulett』から引用された「私たちは押し黙ったまま、朝まだきの静かな小路を歩いていった……」といった例文を味わうことができる。新しいほうでは、HandymailenMailinglisteといったアップ・ツー・デイトなIT語彙ももれなく収録している。古語から現代語までをカバーする、汎用的な今日的辞書として常用し今に至っている。個別のカテゴリーにわかれたシリーズでは、『Das Synonymwoerterbuch(同義語辞典)』を多用している。ネット上でドゥーデンを利用できるのはありがたい。http://www.duden.de/ 独和辞典ではらちがあかない語彙も、これで解決するので、時事ドイツ語には強い味方。
 
●『グリム』(Deutsches Woerterbuch von Jacob Grimm und Wilhelm Grimm)
 グリムとはあの《グリム童話》の編者のこと。グリム兄弟は、実は浩瀚なドイツ語辞書の編纂に着手した言語学者でもあったのだ。二人のライフワークになるはずだったこの辞書は、存命中に完成することはなく、最終巻が脱稿されたのはようやく20世紀も後半になってのこと。英語はOED、フラ語はラルースとくれば、独語はグリムである。とは言っても、全33巻をオリジナル版で揃えるには、軽自動車に匹敵するくらいの購入予算が必要(最近は軽も結構な値段ではあるけれど)。かりに入手できても、この辞書は、単語や語句の意味を識るために気軽にひもとくには不向きで、端的に言えば、語彙の初出や変遷やらを調べるための、研究用の〈資料〉といったところ。舞踏会を報じた記事で見かけたGewalzeは、Walzerと関連していることは予想できるが、独和では確認できない。そこで、グリムを引くと、動詞walzenの名詞形であるとの説明があり、納得がいく。ところで、この辞書、なんとウエブ上に公開されているのである。閲覧のために特別な会員登録など不要で、おかげで、必要に応じてありがたく利用させてもらっている。ちなみに、このページ下にあげたイラストは、『グリム』第1巻の扉の挿絵で、新約聖書『ヨハネ福音書』から「始めに言葉あり」が引用されている。ドイツのフラグ・シップ辞書を惜しげもなく無償で提供している版元の寛容な精神は、使徒ヨハネが伝える聖句と響きあっているようにも思われるのだが……。  *あくまでも紙媒体の印刷本にこだわる場合、我が国で復刻されたバージョンがあり、これなら手に入りやすい。
 
●『ヴァーリッヒ』(Wahrig Deutsches Woerterbuch):
 現代ドイツ語まで含めて、ドイツ語の語法上の疑問に的確に答えてくれる頼りがいのあるドイツ語辞典。1巻本で語数が多いのは大助かり。毎度お世話になってます。Vielen Dank!
 
●『ザンダース』(Daniel Sanders' Deutsches Woerterbuch):
 全3巻。細かなドイツ文字がびっしり並んでいて、おそらく、ドイツ語辞典のなかでは最も読みづらく、見にくいのものの筆頭ではないだろうか。にもかかわらず、ドイツ語の教師である限りは、書架に置いておきたい。まあ、神棚のお守りといったところか。私の脳裏には、『されど我らが日々』で芥川賞を受賞された直後の、若き柴田翔先生が三修社から出版された復刻版をワンセット注文されていた光景が鮮やかに刻まれている。私はオリジナルを古書で購入して、装丁し直した背革装のものを所有しているが、こちらのほうは紙質も悪く、復刻版よりもさらに読みにくい。神棚に祭っておくほかはない。
 
●『ハイネ』(Deutsches Woerterbuch von Moriz Heyne):
 全3巻。語義の歴史的な経緯をわかりやすく説明しているので、ドイツ文字で印刷されているけど、はまってしまうと手放せなくなる。名詞Lebenは語頭にアクセントがあるのに、形容詞形lebendigではなぜアクセント位置が移動しているのか、その経緯を教えてくれる。
 
●ドイツ語の百科事典では『スイス百科事典Schweizer Lexikon)』全7巻を愛読している。いささか年代物で、最新情報こそ得られないが、エンサイクロペディアとしては手頃なヴォリュームで重宝している。表題にあるとおりスイスの地誌・歴史に詳しい。他に、1895年版の古色蒼然とした『マイヤー百科Meyers Konversations-Lexikon)』も必要に応じて覗くことがある。名作《アルト・ハイデルベルク物語》の主人公カール・ハインリッヒがハイデルベルク大学に留学する前に、仮に通ったとすれば(王侯貴族の師弟は〈家庭教師〉に学んだに決まっているが……)、19世紀のドイツのギムナジウムがどのようなカリキュラムであったのか、この事典で具体的に知れる。もっとも、百科の場合、印刷された書物では各時代の歴史を探り、今日的情報はインターネットで調べる、というのが賢明な今風のやり方!
 
グリムのドイツ語辞書の扉絵
マーティのようこそDの国へ ドイツ語辞書・参考書 もっとドイツ語を 日独交流史 ドイツ的デザインを眺める 観光案内書にないウィーン オーストリアから チューリヒ便り
Servus考 後記

Last updated: 2014/1/1